神里達博の「月刊安心新聞+」
トランプ前米国大統領が、選挙集会の演説中に銃撃され、負傷した。奇跡的に軽傷で済んだが、不幸にも聴衆の1人が流れ弾に当たって命を落とし、また2人が重傷を負った。
容疑者は20歳の男性で、その場で米シークレットサービス(USSS=米国大統領警護隊)に射殺された。動機は明らかになっていない。また共犯者が存在することを示す証拠も出てきていない。
現在、警備態勢に対しての批判が米国内で巻き起こっている。いずれ公式の調査結果が出るだろうが、現在までに分かっている事実について、まず確認しておこう。
現場となったのは「バトラーファームショー」という、農業関連の品評会などが行われるイベント会場だ。USSSはトランプ氏が登壇する舞台や観客が入る中心部分の警備を担当し、その外周部分については州警察や郡警察に任せていた。USSSが地方の警察と連携して警備すること自体は、一般的である。
容疑者は、USSSが重点的に警備する会場部分の、すぐ外側に隣接するある企業の屋上から狙撃した。会場は基本的に見通しの良い原っぱで、周辺で高い建物といえばその社屋くらいのものであり、素人目にも明らかに警戒すべきポイントだ。そこの警備をUSSSが直接担当しなかったことがまず、問題だろう。
背景には人員の不足があったとも報じられている。USSSは本来大統領警護を担うが、外国要人や元大統領なども警護対象である。今回の集会が開かれる直前までワシントンで北大西洋条約機構の首脳会議が開かれており、十分に人を割くことができなかった、ということらしい。
一方で、容疑者が狙撃を始める約30分前に、地元警察は不審者の存在を把握していたという情報もある。屋根に登って容疑者を確保しようとしたが、銃を向けられたので屋根につかまっていた手を離し、地面に落ちた地元の警官もいたようだ。
またUSSSは共和党のみならず民主党議員からも批判されており、キンバリー・チートル長官の辞任を求める声も出ている。彼女は米国メディアに「何が悪かったのかを調査し、二度と同じことが起きないようにするのが自分の責任だ」と語っているが、問題の外周部分の警備は「地元警察の担当」とも主張、辞任は考えていないという。いずれにせよUSSSと地元の間に連携不足があったのは間違いないだろう。
ところで、ネットでは事件直後からさまざまなうわさが飛び交ったが、特に二つの極論が目立っている。一つは現政権が関与したというもの。そしてもう一つはトランプ氏による自作自演だ、とするものだ。もちろん、いずれも事実無根だろうが、事件を政治的謀略と決めつけている点で、両者はとても似ている。
深刻なのは、根拠不明のメッ…